丘陵地帯にあり、『中国のレモンの里』として知られる安岳は、四川省東部に位置し、古称は普州といいました。後漢時代から仏像造像運動が始まり、唐、宋時代に最も盛んになり、明清時代も絶えずに続けられました。
特に安史の乱のとき、玄宗皇帝が蜀に難を逃れた際に優秀な職人たちも移り住んだため、優れた石刻が多く、芸術的価値の高い石窟群に恵まれました。雲崗石窟と龍門石窟を造った芸術家たちの末裔による石窟芸術の最高傑作があちらこちらでご覧いただける『仏の里』となったわけです。現在残る石刻造像は10万体を超え、その殆どが中国の仏像造像が盛んだった唐、五代十国から北宋時代に造られたものであるため、芸術性の高い仏像群と評価されています。
安岳石刻は300ヶ所の場所に分布していますが、安岳を代表する仏像が多く集まり、芸術性も高い石刻群は臥仏院、円覚洞、千仏塞、毘盧洞、華厳洞、茗山寺の6ヶ所となります。
臥仏院
安岳から39キロ離れる八廟鎮に位置し、初めての仏像は唐代の723年に彫られ、五代まで仏像彫刻活動が続けられました。残存するのは仏像1613体(または1593体)、石刻模写経文40万文字(この経文は、玄奘三蔵が伝えた最初期の訳経石刻で、中国の国宝となっています)、石窟139窟です。
代表作は戦後発見された、全長23mの釈迦涅槃像で、大足の宝頂山釈迦涅槃仏より400年古く、唐代最大の全身石刻涅槃仏であり、完璧な涅槃仏とも言われ、また、楽山の世界最大の石刻仏像よりと美しいとされます。中国最古で中国第一の釈迦全身涅槃像といわれています。
(安岳・臥仏院)