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ラ・ブリーグ村のノートルダム・デ・フォンテーヌ礼拝堂

Columnラ・ブリーグ村のノートルダム・デ・フォンテーヌ礼拝堂

 ラ・ブリーグ村は、フランス・アルプス南部の美しい谷間に佇む人口500人の村です。ロマネスクの橋が残り、広場からはモン・ベゴ(ベゴ山)の眺望が楽しめます。何よりもこの村を有名にしているのが郊外のモン・ノワール(黒い山)に人里離れて建つノートルダム・デ・フォンテーヌ礼拝堂です。「ニース・ヒンターラントの彩色礼拝堂群」と呼ばれる、この地域独特のフレスコ礼拝堂の代表格で、後期ゴシックのフレスコ画の傑作が素晴らしい状態で残されています。

 ここは水の神々に捧げされた異教徒時代の神殿があった場所に12世紀に建てられた礼拝堂で、外観は大変質素にできています。一方、内陣は15世紀のフレスコ画で覆われ、聖史の一大絵巻になっています。祭壇には福音書記者、キリストの降臨、受胎告知が、ファサード(西正面)の裏面には巨大な最後の審判が、そして左右(南北)の壁にはエルサレムへの入場や最後の晩餐、キリストの受難から復活まで壁一面に描かれています。フレスコ画の登場人物は500人にも登ります。特に必見なのが、内陣に優美な手法で描かれた聖母の生涯と幼子キリスト、そして北面中央に描かれたユダの首吊りです。ここに描かれたユダは心臓や肝臓など臓器を2つずつ持っており、彼の二面性を暗示しています。